「as a Service」の舞台裏:クラウドオーケストレーションを支えるCMPの役割と利用シーン

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筆者名:城咲子(じょう せきこ)

情報システム部でセキュリティを担当している城咲子です。セキュリティに関する情報や日常の出来事(グチやボヤキ笑)などを発信していきます。(情報処理安全確保支援士/登録セキスペ/CISSP)

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  • 最小権限の原則
  • 測定できなければ管理できない!
  • 失敗する可能性のあるものは、いずれ失敗する。

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はじめに

情報システムセキュリティを担当している皆さん、クラウド環境の管理は日々の大きな課題ですよね。最近では、ユーザーが必要なインフラやアプリケーションを「as a Service」として、セルフサービスで利用できる環境が増えてきました。こうした便利な仕組みの裏側で、ワークフローの自動化やガバナンスを支えているのがクラウド管理プラットフォーム(CMP)です。今回は、このCMPとは何か、そして具体的な利用シーンを交えて解説します。

クラウド管理プラットフォーム(CMP)とは?

CMPとは「Cloud Management Platform」の略で、複数のクラウド環境(パブリック、プライベート、ハイブリッド)を一元的に管理するためのツールやサービス群のことです。CMPの主な役割は以下の通りです。

  • オーケストレーション: 複数のサービスやリソースを連携させ、自動化されたワークフローで実行します。
  • ガバナンス: 誰が、いつ、どのようなリソースを利用できるかといったポリシーを定義し、管理します。
  • コスト管理: クラウド利用料の可視化や最適化を支援します。
  • セキュリティ: ポリシー違反の監視や、コンプライアンス要件への準拠をサポートします。

簡単に言えば、CMPはクラウド環境を効率的かつ安全に運用するための「統合管理基盤」です。

具体的な利用シーン:自動化されたワークフロー

「as a Service」としてのクラウドオーケストレーションは、CMPが提供する自動化ワークフローによって実現されます。ここでは、私が実際に体験したセキュリティ担当者ならではの視点を交えて、具体的な利用シーンをいくつかご紹介します。

利用シーン1:開発環境のプロビジョニング

新しいプロジェクトが立ち上がった際、開発者から「すぐに開発サーバーを立ててほしい」と依頼されることがよくあります。通常であれば、手動でサーバーを構築し、必要なミドルウェアをインストールし、セキュリティ設定を行う必要があります。これは、時間も手間もかかり、設定ミスによるセキュリティリスクも伴います。

CMPを活用すると、このプロセスを完全に自動化できます。

  1. 開発者は、CMPのポータルサイトにアクセスし、「開発環境の構築」というテンプレートを選択します。
  2. テンプレートには、仮想マシン、OS、必要なミドルウェア、そして事前に定義されたセキュリティグループ(ファイアウォールルールなど)が含まれています。
  3. 開発者が「作成」ボタンをクリックすると、CMPが自動的にクラウドプロバイダー(AWS, Azureなど)のAPIを呼び出し、必要なリソースをガバナンスポリシーに従ってプロビジョニングします。

このワークフローにより、開発者は数分で安全な開発環境を手に入れることができ、私たちは手作業による設定ミスやセキュリティホールを未然に防ぐことができます。これはまさに「Infrastructure as a Service」をCMPが自動化して提供している一例です。

利用シーン2:VDI(仮想デスクトップ)の払い出し

在宅勤務やフリーランスの利用者が増える中、セキュアな作業環境としてVDI(Virtual Desktop Infrastructure)の需要が高まっています。しかし、ユーザーごとにVDI環境を手動で構築・管理するのは非常に大変です。

CMPを使えば、VDI環境の払い出しも自動化できます。

  1. ユーザーが申請フォームからVDIの利用を申請します。
  2. CMPが申請内容を承認し、自動的にVDIインスタンスを立ち上げます。
  3. この際、ユーザーの所属部署や職務権限に応じて、アクセスできるアプリケーションやネットワークセグメントを自動的に割り当てます。
  4. ユーザーは、専用クライアントを通じて、セキュアなVDI環境にアクセスできます。

この仕組みは、ユーザーの利便性を高めるだけでなく、一貫したセキュリティポリシーを適用できるため、情報漏洩リスクの低減にも繋がります。

まとめ

CMPは、単なる監視ツールではなく、クラウド環境における「as a Service」を支える心臓部です。オーケストレーションによる自動化は、私たちの運用業務を大幅に効率化し、手動作業によるヒューマンエラーを防ぎます。そして何より、ガバナンスとセキュリティポリシーを一元的に管理できるため、複雑化するクラウド環境でも堅牢なセキュリティを維持できるのです。

今後、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの導入が進むにつれて、CMPの重要性はますます高まるでしょう。情報セキュリティ担当者として、この技術を理解し、活用していくことが、安全な情報システムを構築するための鍵となると私は考えています。