- まさか自分に?休日にかかってきた奇妙な電話
- なぜ詐欺だと見破れたのか?危険な兆候(IoC)を解説
- これは「ソーシャルエンジニアリング」という攻撃です
- もし不審な電話がかかってきたら?鉄壁の対処法
- 【情シス視点のぼやき】組織のセキュリティも「人」が起点
- まとめ:常に「疑う」姿勢を忘れないで
まさか自分に?休日にかかってきた奇妙な電話
こんにちは、情報システム部でセキュリティ担当をしている城咲子です。
企業のサイバーセキュリティを守るのが私の仕事ですが、先日、プライベートのスマホに見事なまでの詐欺電話がかかってきました。やれやれ、セキュリティ担当の気が休まる日はありませんね。
あまりにも典型的な手口だったので、皆さんの注意喚起のために、その生々しいやり取りを共有します。
着信表示: +96975554946
私: 「(……国際電話?全く心当たりがないな)はい、もしもし」
相手: 「私、◯◯警察の者ですが、城咲子さんのお電話でよろしいでしょうか」
私: 「(フルネームを知っている…?)はい、そうですが」
相手: 「実は『福井の事件』のことで、ご協力いただきたくお電話しました。心当たりはありますか?」
私: 「(福井?全くない)いいえ、ありませんが」
相手: 「承知いたしました。これは機密性の高い話ですので、誰もいないところで電話を聞いていただけますか?」
私: 「(…はい、アウトー!)結構です」ガチャ。
思わず「アウトー!」と声に出しそうになりましたが、冷静に電話を切りました。セキュリティの仕事柄、すぐに詐欺だと判断できましたが、もしそうでなければ少しは信じてしまったかもしれません。
この短いやり取りの中に、人を騙すための巧妙な心理トリックが満載です。今回は、この実体験を基に、情報セキュリティの専門家の視点から、この手の詐欺が使う「ソーシャルエンジニアリング」の手口を徹底解説します。
なぜ詐欺だと見破れたのか?危険な兆候(IoC)を解説
私が「これは詐欺だ」と即座に判断できたのには、明確な根拠があります。サイバーセキュリティの世界では、攻撃の痕跡や危険な兆候を「IoC(Indicator of Compromise)」と呼びますが、今回の電話にも分かりやすいIoCがいくつもありました。
1. 異常な発信者番号(+969...)
まず、日本の警察が国際電話で連絡してくることは絶対にありません。 「+」から始まる番号は国際電話を示しますが、+969という国番号は存在すらしません。これは、海外のサーバーを経由したり、番号を偽装したりしている典型的な証拠です。
仕事で海外とのやり取りがない限り、見慣れない国際電話番号は100%無視するのが正解です。
2. 権威を騙る相手(「警察です」)
人は制服を着た人や、公的機関を名乗る相手に弱いものです。これを「権威への服従原理」と呼びます。詐欺師は、私たちが警察という言葉に抱く「信頼」や「恐怖」を悪用し、冷静な判断力を奪おうとします。
3. 曖昧な言葉で不安を煽る(「福井の事件」)
「◯◯の事件」と具体的なようで曖昧な言葉を使い、「何か大変なことに巻き込まれたのかもしれない」と相手に不安と焦りを生ませる手口です。もし偶然にも福井に知り合いがいたり、旅行した経験があったりすれば、「まさか…」と話を聞いてしまうかもしれません。
4. 第三者から隔離しようとする(「誰もいないところで」)
これが決定的な一言です。詐欺師が最も恐れるのは、あなたが誰かに相談すること。家族や友人に「こんな電話がかかってきたんだけど…」と話せば、詐欺はすぐに見破られてしまいます。
そのため、「機密情報だから」というもっともらしい理由をつけて、あなたを孤立させようとします。 この言葉が出た瞬間に、詐欺だと断定して間違いありません。
これは「ソーシャルエンジニアリング」という攻撃です
ここまでの手口を、私たち専門家は「ソーシャルエンジニアリング」と呼びます。
ソーシャルエンジニアリングとは、システムの脆弱性ではなく、人間の心理的な隙や行動のミスを突いて情報を盗み出す攻撃手法です。今回の電話は、まさにこのソーシャルエンジニアリングの典型例です。
- 権威(警察)を装い、
- 緊急性(事件)を演出し、
- ターゲットを孤立させる。
これらの心理トリックを使い、冷静な判断ができない状況に追い込んでから、金銭の要求や個人情報の詐取といった本題に入っていくのです。
もし不審な電話がかかってきたら?鉄壁の対処法
では、実際にこのような電話がかかってきた場合、どうすればいいのでしょうか。答えは非常にシンプルです。
- 何も言わずに即座に電話を切る 相手の土俵に乗ってはいけません。「はい」「いいえ」といった返事すら、相手に情報を与える可能性があります。不審に思ったら、即座に電話を切りましょう。
- 絶対に折り返さない 「一応確認のために…」と折り返してはいけません。特殊な番号で高額な通話料を請求されたり、あなたの番号が「反応するカモ」としてリスト化されたりする危険があります。
- 着信拒否設定をする 同じ番号からかかってこないように、すぐ着信拒否をしましょう。
- 不安なら「#9110」へ どうしても不安が残る場合や、脅迫めいたことを言われた場合は、警察相談専用電話である「#9110」に電話してください。詐欺師が指定する番号ではなく、必ずこの公式な番号にかけることが重要です。
【情シス視点のぼやき】組織のセキュリティも「人」が起点
今回の件は個人のスマホでしたが、もしこれが会社の代表電話や、社員の社用携帯にかかってきたらどうでしょうか。
「経理部の〇〇さんいますか?至急、振り込みの件で…」 「情報システム部の者ですが、パスワードの確認を…」
手口は同じです。攻撃者は巧みに権威を装い、緊急性を演出して情報を盗もうとします。企業のセキュリティ対策というと、どうしても高価なシステムやソフトウェアに目が行きがちですが、全ての起点は「人」です。
従業員一人ひとりが「あれ、これって怪しいかも?」と立ち止まれるかどうか。その意識こそが、組織を守る最初の、そして最も重要な防壁なのです。
「自分は騙されない」という正常性バイアスが一番の敵。この体験を、自社のセキュリティ研修のネタにしようかと考えている今日この頃です。まったく、仕事のネタがプライベートで降ってくるとは…。
まとめ:常に「疑う」姿勢を忘れないで
今回は、私の実体験を基に、警察を騙る詐欺電話の手口とその対策を解説しました。
- 「+」で始まる国際電話、知らない番号は無視
- 「警察」「事件」「誰もいないところで」は詐欺のキーワード
- 攻撃はシステムの脆弱性だけでなく、人の心も狙ってくる
攻撃者は、私たちが持つ良心や焦りの気持ちを巧みに利用してきます。どんなに巧妙なことを言われても、常に一歩引いて「本当に正しい情報か?」と疑う姿勢を忘れないでください。
あなたの冷静な判断が、あなた自身と、そして組織の資産を守ることに繋がるのです。
今回の電話詐欺(ビッシング)は、人間の心理的な隙を突く「ソーシャルエンジニアリング」の典型例です。こうした手口は、メールやSMSを使ったフィッシング詐欺でも共通して使われます。
以下のまとめ記事では、様々なフィッシング詐欺の手口と、騙されないための具体的な対策を網羅的に解説していますので、併せてご覧ください。
▼ 様々なフィッシング詐欺の手口(SMS, メール, 偽サイト等)を知りたい方へ
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